文学青年(贈り物)

秋はどこか不安定で、もの悲しげな気持ちになってしまう。
日々捲っているはずの本のページに枯葉が落ちてくる。
自然の栞。それはカサリと音を立てて、また風に乗ってどこかへ行ってしまう。
肌寒い風が僕の頬を掠めていく。

この公園はいつだって僕の居場所だ。
春には桜が美しく咲き、
枝の伸びた木が、夏になれば木陰を作ってくれる。
秋にはこうして様々な色をした栞が降ってくる。
しかしさすがに冬になると肌寒いので、僕は冬のこの公園の顔をあまり知らない。

僕が本に手を伸ばし始めたのは、幼少期に少し長い入院をした時からだ。
本の世界に潜り込めば、病室のベッドの上ですらどこにでも行けた。
だから僕はどんどん飲み込むように本を読み漁った。
言葉はどこまでも自由に僕を様々な世界の主人公にしてくれる。
今ではすっかり健康にはなったものの、必ず本を持ち歩いていないと落ち着かない。

猫が目の前を横切っていく。
君たちは冬にどこにいるのだろう。
食事は間に合うのだろうか?
さあ、今日の旅は何処から始まるのだっけ。
読みかけの本のページを再び開いた。