君の中でひとつの終わりを迎えたあの日、 僕はそれの本当の意味を知らずに笑っていた。 君はとても賢いから、あの瞬間には全てわかっていて 僕だけがわかっていなかった。これが本当の終わり、 もう二度と繋がることのない糸、 たった1枚の紙切れで。 たった…

文学青年(贈り物)

秋はどこか不安定で、もの悲しげな気持ちになってしまう。 日々捲っているはずの本のページに枯葉が落ちてくる。 自然の栞。それはカサリと音を立てて、また風に乗ってどこかへ行ってしまう。 肌寒い風が僕の頬を掠めていく。この公園はいつだって僕の居場所…

そんな顔で笑わないで

いっそ言ってくれてもいいんだ 「私が手を繋げるのは、ここまでよ」って それなのに君ったら少し困った顔で笑いながらこの手を手放さないから僕だって手放せない いっそ僕から口にしようか時折悩んでは怖くて怖くてそんなこと出来ないんだ とてもじゃないけ…

一種の恋文のようなもの

あなたがくださった淡い桜色の願い玉 何処につけようか迷ったのですが わたしが毎日触れるものに致しました あなたとお揃いというだけでわたしには願いも何も浮かばなくなるくらい嬉しくて 親指と人差し指の間でコロコロと触れ遊んではあなたに想いを馳せる…

それは、それでしかない

手のひらのホクロをぼんやりと見つめる 薬指の下にある、小さな小さな黒い点 なんだかこれって「私みたいね」とふと思う どの皮膚にも染まりきれずに黒点と化すするしかなかった「どうしようもない私」 そしたらたまらなく取りたくなって、これだけは何が何…

深夜、川沿い

5月の上旬に君と夜の川沿いを歩いた。 程よく酔っ払っていたはずなのに夜の風はまだ容赦無く僕らの体を冷やし、「寒い!」「寒い!」と語彙力をなくしたように同じ言葉を繰り返してポケットに手を突っ込んで肩を縮めた。酔っ払っているとなんとなく歩きたく…

適切な終わりを僕らは知らない

具体的な解決策のない僕らの未来は 今の僕らの関係性に酷似していて 笑いたくても笑えないね それでも一時の夢を見るように 遠い遠い何処かへ想いを馳せて 桃源郷に心を着地させる 僕らどこまで行っていたらよかったのだろう 何処が引き返すべきところだった…